要求で吠える・無駄吠えする犬のしつけ
吠える犬のしつけを考えるときに、まず犬が吠える原因を「二つ」に分けて考えていただきたいのです。まず一つ目・・
1、犬が飼い主に何かを要求して吠えている
ということです。これは一般的に「無駄吠え」とも呼ばれます。
犬が
「ケージから出せよ!」
「いつもみたいにナデナデしてくれよ!」
「お腹空いたから何か食べさせろよ!」
「早く散歩に連れて行けよ!」
と、イライラして要求して吠えているわけですね。
さーあなたはここでどうしますか?
「犬の気持ちを考えたら、犬の思うとおりにしてあげたい・・」と思われる方が多いでしょう。人間の赤ちゃんも、泣いていたら親は抱っこしてあやしますね。
でもそれが、もう5歳くらいの子供だったらどうしますか?
「このままではワガママになってしまう・・」「物事の良し悪しは教えないと・・」と思って毅然と対処しますよね。吠える犬のしつけだって同じことです。チヤホヤするだけの接し方では、犬はそれが習慣化してしまい、要求が際限なく増していってしまうのです。
そして、犬は独特の主従関係の認識を持ちます。「自分が従うのか?相手が従うのか?」・・犬は常に本能で感じていますよ。
あなたの反応・態度を常に感じていて、その積み重ねで、あなたとの主従関係を認識していくのです。
警戒や威嚇で吠える「番犬吠え」のしつけ
犬が吠えるもう一つの要因は、
2、警戒や威嚇で吠えている
というものです。いわゆる「番犬吠え」になります。犬はもともと、ワンワン吠えるように人間が作った動物です。
かつて、人間がオオカミの亜種を飼い始めた何万年も前の大昔は、犬を飼う目的は「狩猟の補助役・番犬役・非常食のための家畜」でした。
トラやクマなどの大きな肉食獣がそこらじゅうにいます。猿のように木に登って逃げる能力は、人間にはもうありませんでした。武器も持ってはいますが、トラやクマなどの巨大な猛獣がふいに襲ってきたら、太刀打ちできません。
そこで、犬の五感で早めに察知してもらい吠えて知らせてもらうことで、戦闘準備もできるし、犬が吠えて直接追い払ってもらうことができたのです。
ですので、より敏感で吠える犬を人間は重宝し、その犬同士を交配させ番犬としての能力を強化していったのです。(選択育種といいます)
そうやって何万年も吠えるように強化してきたわけですから、ここ数十年で急に「吠えないでね♪」と言ったって、犬は変われるわけがないのです(笑)
そして、今でもどの国でも一部の飼い主さんは、あいかわらず番犬として犬を飼っているわけです。
ですから、吠える犬のしつけをする場合は、そういう犬の本能も理解してあげた上で、のぞまないといけないのです。重要な意識設定です。
吠える犬の具体的なしつけ方法
では、1と2の原因で犬が吠える場合、具体的にどのようにしつけすれば良いか解説いたします。
多くの犬のしつけ教材は、「吠える犬をどうやって調教するか」のテクニックばかりを強調しています。ですが、犬が吠える原因が解消されていないのであれば、意味がないのです。
むしろ、根っこのストレスが解消されていないまま表面的にねじ伏せているだけですので、しつけをやっているつもりでも直りにくいですし、いつか爆発して豹変することになってしまいます。
吠える原因を解消する意識と、直接的な犬のしつけ手法の両方を考えないといけないのです。
まず1の要求吠えです
原因の解消は、かまい過ぎや赤ちゃん扱いの態度を変えることです。それだけでも犬の吠えが消える場合もあります。
直接的な犬のしつけ手法としては、「何をどうすれば良いのか」を体で教えてあげることです。「ダメ!」などの怒声で怒っても意味はありません。犬の興奮をあおってしまうだけになります。
「し〜!」などの合図音と一緒に、犬の口を手で閉じてあげれば良いのです。合図音と、口を閉じて静かに待つことが犬の中で関連付けられると、離れていても合図音だけで吠え止むようになります。
犬のしつけにおいては、否定することよりも「何をどうすれば良いのか」を指示してあげることです。そしてその前に、「指示が何の意味なのか」浸透するまでは、根気よく体で教え続ける必要があります。
この際の注意点ですが、赤ちゃん扱いしないことです。上記のことを甘くやってしまうと、犬はただ単に「吠えればかまってもらえる」と悪い方に学習してしまうからです。厳しい態度で教え続けてください。
それでも興奮して変化がないようでしたら、環境を変えます。とは言ってもどこかに移動させるわけではなく、ケージ全体を厚い生地の布などで覆って、暗くしてしまうのです。
犬科の動物の巣穴は、もともとは地面に穴を掘った暗くて狭い場所です。そこでは静かに過ごし、外敵に場所を知られないように過ごします。
落ち着いてきたら、徐々にその布を開けていきながら犬の様子をみてください。
続いて2の威嚇吠えです
まずは威嚇するような警戒心を持たないように、子犬の頃からたくさんの人や犬を見せて慣れさせておくことが重要ですが、もうすでに威嚇吠えをするようになってしまった犬には、リハビリが大切です。
急にあせって犬に会わせても、パニックになるだけで余計に怖がりになってしまいます。簡単な状況から少しずつ慣れさせてあげましょう。
今はインターネットで何でも見れる良い時代です。ユーチューブなどの動画サイトもたくさんありますが、犬の動画をパソコンやテレビ画面で犬に見せてみましょう。
これがまず第一段階です。一番優しいレベルの訓練です。
犬の動画を見せながら、「し〜!」などの合図音と一緒に、犬の口を手で閉じて褒めてあげてください。毎日毎日いろんな犬種を見せて、時には音も再生して聞かせて、慣れさせてください。
あせらないで毎日続けましょう。
どんな犬の動画を見せても犬が吠えなくなったら、いよいよ実地訓練です。よく他の犬が通るお散歩コースに行ってみましょう。もちろん、最初から犬に対面で会わせるのは無理です。
犬の姿が見えたら、脇道や反対側の歩道などに移動し、なるべく多く距離をとってください。吠えても吠えなくても、先ほどの「合図音と口を閉じる褒め」をおこなってください。
あせらずに、犬の慣れの度合いも把握しながら、少しずつ他の犬との距離を短くしていってください。「怖くないんだ・・吠えなくても大丈夫なんだ・・静かにできたら褒めてもらえるんだ・・」ということを犬が理解することが大切です。
そして最後になりますが、吠える犬のしつけに限らず、すべての教えに共通することですが、犬に何を教えるにしても褒めるにしても、「誰に褒められるか」で、結果が180度変わるということです。
良い関係が作れている相手なら・・犬がリーダーとして認めた相手なら・・
どんな教えだって聞きたくなると思いませんか? 褒められたら嬉しくなると思いませんか?
その先は言わなくても、もうお分かりですよね(^-^)